◇「やればできるんだ」
茨城県内在住の自閉症の男女12人が8月末、療育の一環で、保護者らとともに長野県の北アルプス・岳沢小屋(標高2170メートル)までの登山に挑戦した。集団生活を苦手とする自閉症者だが、日本山岳会茨城支部のサポートを受けて、全員がそろって登り切った。「やればできるんだ」。到達した親子らは喜びをかみしめて、上高地を一望した。
登山は、集団生活に適応させる目的で県自閉症協会が04年から続けており、4回目の今回は8月29日に行った。「子供を見ることに精いっぱいで、安全に登れるか心配」との保護者の不安もあり、日本山岳会の有志がガイドを引き受けている。
今回参加したのは自閉症がある14~43歳までの男女12人と保護者13人。事前に勉強して一人一人の症状を覚えてきた山岳会のスタッフ8人が先頭から最後尾までにつき、午前5時半に上高地から一列になって出発した。
自閉症の人の多くは言葉や表情で自分の気持ちを表すのが難しく、今回の参加者もほぼ無言で黙々と登った。前回の磐梯(ばんだい)山(福島県)では地べたを転げ回ったり、他人の腕をかんだりして登山を全身で拒んだという潮来市の高校3年、仲沢さとみさん(18)も、今回は静かに登り始めた。母隆子さん(49)は「登山するということがだんだん分かってきたんじゃないでしょうか」と成長を実感した。
登り始めて約1時間後、桜川市の高校2年、大島開人さん(16)が「下山したい」と弱音を吐いた。母みのるさん(41)が励まし、何とか登山を続行した。
約3時間後に全員が岳沢小屋へ到着。登り切った大島さんは、同じく自閉症の弟優樹さん(14)と歌を歌ってご機嫌そう。全員けがもなく、無事に下山した。保護者は「うれしそうだった」と、登山を達成した我が子の気持ちを察していた。
同協会事務局長の仲沢隆子さんは「自閉症の子は自己肯定ができないことが多い。それでもこの登山で、『あの時はがんばれた』という経験を体で覚えることができた」と語る。また「自閉症だから何もできない、ということはない。今回のようにプロ(日本山岳会)が手伝ってくれれば社会参加できることを、世間にも知ってほしい」と訴えた。
引用:毎日新聞 http://mainichi.jp/area/ibaraki/news/20101005ddlk08040042000c.html